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東京地方裁判所 昭和35年(行)38号 判決 1963年11月29日

新潟県高田市本町二丁目一四二番地

原告

通也こと 関沢忠蔵

東京都千代田区内幸町一丁目二番地

被告

関東信越国税局長

広瀬駿二

右指定代理人検事

真鍋薫

法務事務官 中田一男

大蔵事務官 中野政次郎

藤本作太郎

右当事者間の昭和三五年(行)第三八号行政処分無効確認請求事件について、当裁判所は、次のとおり判決する。

主文

本訴を却下する。

訴訟費用は、被告の負担とする。

事実

原告は、「原告の昭和二五年分所得税に関し、昭和三五年二月一七日付でした被告の審査決定を取り消す。訴訟費用は、被告の負担とする。」旨の判決を求め、その請求原因として、次のように述べた。

原告は、昭和二五年分所得税につき、所定期間内に所轄の高田税務署に対し、青色申告書により、総所得金額を金三二五、七六四円として確定申告したところ、同署長は、昭和二六年一二月二六日付でこれを金八八八、七三一円と認定して更正し、被告は原告の審査の請求につき、昭和二七年八月七日付で、これを金八七四、九四三円と認定して、更正処分の一部を取り消す旨の審査決定をした。原告は、これを不服として、審査決定の取消しを求めて東京地方裁判所に出訴し、右事件は、同庁昭和二七年(行)第一四七号所得税不当課税処分取消請求事件として審理され、昭和三四年一一月一九日、審査決定はその通知書に理由の記載を欠き違法であるとの理由で、原告勝訴の判決があり、同判決は被告の上訴がなく確定した。ところが、被告は、昭和三五年二月一七日付で、前にした審査決定は理由の記載を欠くから、右判決の趣旨に従い、これを取り消すが、かくては、審査請求に対し審査決定がないこととなるから、あらためて適法な理由を付記して審査決定をするとして、原告の昭和二五年分所得税の総所得金額を金八七四、九四三円と認定し、更正処分の一部を取り消す旨の先の審査決定と同趣旨の、理由を付記した決定をした。しかし、被告のした右昭和三五年二月一七日付の審査決定は違法であるから、その取消しを求める。

被告指定代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は、被告の負担とする。」との判決を求め、原告主張の課税の経過に関する請求原因第一項の事実はすべて認め、本件審査決定が違法であるとの主張を争うが、被告は、昭和三八年一〇月八日付で、昭和三五年二月一七日付の審査決定を取り消し、高田税務署長のした原告の昭和二五年分所得税に関する更正処分を全部取り消す旨の審査決定をしたと述べた。

証拠として、被告指定代理人は、乙第一二号証、同第一三号証の一ないし五、同第一四号証の一、二、検乙第一号証を提出し、証人葛西洋の証言を援用し、原告は、乙第一四号証の一、二の成立は認めるが、その余の乙号各証の成立は不知と述べた。

理由

本訴の適否を判断するに、本訴は、原告の昭和二五年分所得税につき、高田税務署長のした更正処分の一部を取り消した被告の昭和三五年二月一七日付審査決定を違法として、その取消しを求めるものであるところ、成立に争いのない乙第一四号証の一、二と弁論の全趣旨とによれば、被告は、昭和三八年一〇月八日付で、右審決定には誤りがあつたとしてこれを取消すとともに、あらためて同日付で、「高田税務署長が原告の青色申告書による確定申告につき更正処分をするにあたり、通知書に全く理由を不記しなかついのは不適当であるから、原告の昭和二五年分所得税につき同署長のした更正処分は、更正所得金額及び過少申告加算税額とも全部取り消す」旨の審査決定をし、その頃原告にその旨通知したことが認められ、右認定に反する証拠はないから、原告はこれにより本訴を維持する利益を失うにいたつたものというべきである。

よつて、本訴を却下することととし、訴訟費用の負担については、民事訴訟法第九〇条を適用して、全部被告に負担させることとし、主文のとうり判決する。

(裁判長裁判官 白石健三 裁判官 浜秀和 裁判官 町田顕)

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